エロゲー 夏ノ雨 翠ss『雑談その14』
夏ノ雨 翠ss『雑談その14』
説明:共通ルート。
ご飯どきの翠ちゃんと宗介
「でさあ。もしもーし。聞こえてる?聞こえてるでしょ。居留守?受話器取ってる時点で手遅れだからね。というか話の途中で居留守に切り替えるその発想ダイナミックすぎるから」
「聞こえてる」
「じゃ早く替わってよ。いるんだよね?」
「やだ」
「なんでよ」
「理香子はなぁ、お前と話してるほど暇じゃねーの」
「は?」
「あいついま晩メシという重大なミッション抱えてるから。悪いな。また今度な」
「ばんごはん?こら。切るな。あ、ホントに切ったな……」
*
「もしもーし。宮沢でーす。切ったらまたかけるよ」
「もしもし……」
「ふふん」
「かけてくんなよ。シェフの気が散るだろうが」
「切るほうが悪いの。なんなのそれ。大人しくリカちん出してくれない」
「それが実はな、残念なことにあいつ今出かけてんだよ。明日には帰ってくるから。悪いな。また今度な」
「ご飯作ってるんでしょうが。二秒でバレる嘘吐かないの」
「なんだよさっきから」
「それあたしが聞きたい。あのさぁ。ちょっとくらい手が離せないわけじゃないでしょ」
「腹減ってんだよ。一刻も早く食べたい。手が離せない」
「すぐ済むから」
「嘘つけ。絶対長くなるだろ」
「ならないならない」
「わかった。よし、代理で伝えとく。今からピーって言うから待っとけ。何用件は」
「言えるわけないでしょ」
「なんで?」
「プライバシーにかかわります」
「大丈夫。俺のことは電話線だと思ってくれ。光ケーブルを信じろ」
「信用おけない」
「なんだよ」
「女の子同士の話だからね」
「大丈夫。耳から入って口から抜ける」
「……じゃあ、ちゃんとたのむよ?しょうがないなあ。リカちん〜はい言って」
「『理香子〜』」
「ちゃんと聞こえてる?」
「こっち向いた」
「うむ。ごきげんいかが?」
「『最近どう?』って前置きいいからな。明日訊け。睨まれたじゃねーか」
「折り入ってリカちんに聞きたいことが、あるんだけどね」
「『ちょっと聞きたいことあんだけど』」
「リカちんの生理周期って27日?28日?どうしたの電話線。あ。また切ったな……」
*
「もしもし。聞こえますか。もしもーし。切ったら放火するかもしれない」
「やめてくれ」
「宮沢ですけど桜井さんのお宅でしょうか。理香子さんはご在宅でしょうか」
「はぁ……間違い電話です」
「ん?ああ、はいはい。そうなんですね。失礼しました。そちらさまはどちらさまでしょうか」
「おまえが名乗れ」
「だから宮沢です。お名前をどーぞ」
「明かせない」
「下の名前は。それくらいいいでしょ」
「宗介」
「え?宗介っていうの。下の名前?ダサい……。あー切らない切らないで」
「めんどくせえなぁもう」
「面倒臭いなぁもう。ご飯まだなの」
「あとサラダとれんこんで挽き肉挟んで揚げるやつ。味噌汁はもう出来てる。マーボー春雨はレンジで出来るやつ。米は土鍋」
「メニューは別に訊いてないけどさぁ。ていうか土鍋って。お腹減ってるのに一手間かけちゃったんだ」
「炊飯器が調子悪いんだよ。なんか鈍器みたいな米を炊きやがる」
「あー。それでご飯遅くなったのね」
「そんな感じ」
「もう10時だもんね。お腹も減りますか」
「わかってくれるか。うちの理香子の手をわずらわせるわけにはいかない。また明日な」
「こら」
「なんだよ」
「ちょっとは手伝えば?」
「邪魔になると悪い。邪魔しないでくれ」
「ビミョウに都合いいよね発言が……」
「後でかけ直してくれ」
「うーん。でもあたしも結構大事な用件なんだよぉ」
「こっちにはそうじゃないから」
「じゃこれからお腹減ってるの忘れるくらい面白い話するから。面白かったらリカちんに替わって。昨日見た夢の話なんだけどさぁ」
「すげー。有無を言わせない。そして話の入りから全く興味を湧かせない」
「昨日の夜ねアフリカ人の人と話してる夢見たんだよ。それでね、こう、すごい怒られてるの。うちの冷蔵庫ばーんって開けてね、卵が入ってるじゃない。それでものすごい説教されてるの。オマエは鳥の命奪った〜みたいな激怒されてあたしはもう平謝り。すいませんすいません。ソコに直れ〜みたいなこと言われてびしって姿勢正してすいませんすいませんって。夢の中で。疲れてるのかなぁ……」
「知らんけど」
「それでこう卵をさあ、そのアフリカ人とね、一緒に鳥の巣に戻しに行くんだよ。目の前にどーんって一本木が立ってて、そのてっぺんに茶色く巣があってさ、そこに卵を戻したいのね。今思えば明らかにニワトリの巣じゃないんだけど。早く戻さなきゃみたいな使命感がとりあえずあるの。でもね、その木がね、高いの。もんのすごい高いの。これ無理ですって振り返るとアフリカさん早くしろって睨んでくるの。にっちもさっちもいかないの。前門の木、後門のアフリカ人」
「早くしろよ」
「それだよ。早くしろこの悪魔めみたいなこと言われて、でもあたしの先に登っていった人なんか足滑らせて木から落ちてくるわけ。高いとこから落ちたら死だよ死。どんどん人落ちてくるの。根本に死体が溜まっていくんだよ。赤い血が水たまりみたいになって。そこに潰れた卵の中身が広がるの」
「急にグロくなってきた」
「それ見つけてまたアフリカ氏激怒するでしょ。もう今度は烈火のような怒りようで地団駄踏んで卵が、卵がってあたしはもうすいませんすいません。早く登れって言われて無理です無理です。ってそこでよーやく目が覚めてもうあああーびっくりした。あー助かった。あー汗かいた。あー恐かったアフリカの人ってほっとしてさ、いやホントにほっとして。でもただね。待てよと。何語で怒られてたのか全然思い出せないの。恐怖!」
「うーん」
「恐怖!」
「はいはい怖かった怖かった」
「今日はさ、枕元に卵とか置いといたほうがいいと思う?」
「知らんがな」
「いやー話したらなんかすっきりした。おやすみ〜」
「切るなよ」
暗転