エロゲー 夏ノ雨 翠ss『雑談』

夏ノ雨 翠ss『雑談』
説明
ゆるいかんじの翠ちゃんと宗介



「ねえ桜井」

「うん?」

「あのさ、ほっちょくに、率直に言って」

「飲み込んでから喋ろうな」

「んぐんぐ」

「もう一枚食うか?ほら、あーん」

「結構です。あのね、率直に言って」

「おう」

「リカちんってあたしのこと嫌いなのかな?」
「んぐんぐ」

「だってもう何回休み時間に話しかけては無視されたか分かんないよ。鬱陶しい、話しかけないで、トイレについて来ないでって」

「最後はそりゃ鬱陶しいだろ」

「そうかな、連れだってトイレ行くのって友達っぽいじゃん」

「付きまとってトイレ行くのは友達っぽいか?」

「ううん……そこは見解の相違と言いますか」

「翠、ティッシュ取って」

「ほら例えば、例えばだよ。用を済ます。ペーパー切れてる。苦闘、煩悶、懊悩、絶望。そこに颯爽と現れるあたし」

「苦しい時の友は真の友ってか」

「そうそう。トイレには紙様がおるんやでえ、って言いながらペーパーを投げ込む」

「不遜な奴だなご神体投げるなんて」

「まさに友情、努力、勝利。開かれる天の岩戸。がっちりと手を組み交わす二人」

「よく洗えよ」

「そして二人はギクシャクした関係を水に流すのであった……」

「清清しいな」

「でしょう。……じゃないよ。それって今までのあたしは下水道行きってことじゃん」

「いいんじゃないの」

「違うの。別にね、リカちんに冷たくされてもそれはいいの。なんだかんだで受け入れてくれてるような気がするし」

「それになんだか興奮するし?」

「しない!」

「なんだ……」

「こう、現状に不満がある訳じゃなくて……勿論仲良くはなりたいんだけど今は経過を楽しんでいる段階というか」

「はあ」

「休み時間にあたしを捜してはそっぽを向くリカちんの熱視線を感じるというか。何だか胸がドキドキするんだ」

「じゃあいいじゃん」

「よくないの。あのね、あたし、沢山リカちんにトライしてるよ。トライ・アンド・無視ーを繰り返してます」

「胸張るなよ」

「なのになんで桜井が先に仲良くなってるの」

「うん?」

「最近なんか宗介、なんて呼んでもらって。ずるい。あたしなんかまだあなた、とか、ちょっと、とかなのに!」

「名前覚えてないんじゃない」

「がーん」

「いや、そこは流石に自信持てよ」

「それに桜井が呼んだら振り返ったうえに何?って言うでしょ、リカちん」

「普通の反応だろ」

「あたしが呼んでも最近は眉一本動かしてくれないもん。大いに不愉快です」

「仮死状態にあったのかもしれない」

「リカちんはそんなクマムシのような真似はしません」

「じゃあ無視だ」

「がーん」

「折角気を使ってやったのに」

「あたしは思いました。不当競争であると」

「はあ?」

「一緒に住んでたら仲良しになって当たり前。だって家族なんだから」

「そうか?仲悪い姉弟なんていくらでもいるだろ」

「それは……ほら、積年の恨みつらみが祟ってそうなるんでしょ。桜井とリカちんはまだその段階までは行ってないわけ」

「白湯飲むか?」

「いる」

「ほら」

「ずずず」

「せんべい食うか?ほら、あーん」

「結構です。あのね、だから」

「んぐんぐ」

「今日はリカちんの部屋にお泊まりしようと思います」

「叩きだされそうだな……」

「つきましては桜井にね、ほら」

「いーよ。駄目だったら俺の部屋で」

「信じてたよ桜井!」

「ただし床で布団な」

「ええー、女性蔑視的発言。女にふかふかベッドは勿体無いなんて」

「どこのタイラントだお前は」

バンコクが首都の仏教国は…………ごめん」

「白湯でも飲んで落ち着け」

「……ずずず」

「ふああ……」

「…………」

「…………」

「……おせんべ、硬いね」

「……おお」

「……リカちん、帰ってこないね」

「寄り道してるんだろ。理香子猫っぽいし」

「お泊まりさあ、断られたらどうしよう」

「だから布団貸してやるって」

「そうじゃなくて。あたしのメンタルがどうしようなんだよ」

「まあ……そりゃヘコむかなぁ」

「リカちんってさ、少なくともあたしより桜井の方が好きじゃん」

「知らんけど」

「それでだよ。率直に言って、桜井から見てでいいんだけど」

「んぐんぐ」

「リカちんってあたしのこと嫌いなのかな?」

「…………」

「…………どう?」

「そんな当たり前のこと訊くなよ」

「うっぐ!!」

「そんなことないに決まってるだろ」

「……わざと切ったよね、今」

「そんなことないに決まってる」

「翠さんは機嫌をそこねた」

「いや、だってさあ。翠自分で分かってるだろ」

「そうなんだけど。でも出兵式は士気を高揚させるためにあるんだよ。お前は祖国の誇りだって言って送り出してくれないと」

「面倒臭い奴だな」

「それ以上言ったら機嫌を損ねるよ。もうイーッてする」

「ごめんなさい」

「誠意が見えない」

「翠……冷蔵庫にバニラアイス、収蔵してある」

「ドロドロじゃん」

「……冷凍庫にもある」

「なんと。興さかすことよ、こち持て来」

「どこの麻呂だよ」

「よからん、よからん」

「ほれ」

「わーい」

「お腹冷やすなよ」

「あれ、何の話だっけ」


暗転