エロゲー 夏ノ雨 翠ss『仮定と結論』

夏ノ雨 翠ss『仮定と結論』
説明
翠ちゃんの高校デビューの話。
宗介とのファーストコンタクト他。モバイルからだと読みにくいと思います。すいません。
以下CUBEホームページより。
宮沢翠(身近過ぎる女友達)
元サッカー部マネージャーで宗介と親しい女友達。かつて宗介が問題を起こしてサッカー部を退部させられた際に武田一志と一緒に退部。以来親友として三人で良くつるんでいる。
明るく裏表のない性格で
女の子でありながら男友達のように付き合えるところが三人の関係を維持できている理由である。マネージャーだったが本人もスポーツ万能で勉強より身体を動かすほうが好きという健康的美人。面倒見がよくて友達も多く何事もポジティブシンキング。「恋愛なんてガラじゃない」と本人はそう語っているが……?



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 二回目の夏が来た。気が付けば満ちている月のような唐突さでもって、帰ってきた。

 社会生活を送っていくうえで課せられるタスクというものは、始めなければ終わらないものばかり。夏休みの課題から、お風呂掃除まで。けれど夏という季節は放っておいてもやってくる。夏に向けた準備をしても、しなくても。かじりついたドーナツはいつか無くなってしまう。夏以外の季節は自動的に終わってしまう。これを理不尽と呼ぶのを大人は許されていない。あたしはあと少し、もう暫くの間だけ自分にそれを許してやろうと思う。ロスタイム。怪我の治療をしていたんだ、少しくらいあったって不思議じゃないでしょう?つまり、この季節を迎えるにあたってあたしには心の準備というものが必要で、けれどそのことをつい失念していた。
 人生ってものは振り返るといつだって同じ長さだ。だから歳を重ねるにつれて、去年一年の長さは短くなってしまう。ホールのケーキを六つ切りにするか八つ切りにするかの違い。今や、甘さ控えめ酸いが強かったりする小さな切れ端。去年一年を鮮やかに思い返すことが出来るのは今年の特権で、それを忘れると待ったがきかない。古くなった思い出は年輪の幅のように圧縮されて潰れてしまう。賞味期限には喩えない。腐るなんて寂しい事は思っても言わないこと。だからあたしが少しだけ去年のことを思い出してやったとしても、それは感傷なんかじゃない。髪を切った友達に自分はそれに気が付いた旨お伝えするのと同じくらい、必要欠くべからざる儀式なんだ。
 温暖化の影響で今年の春はちょっとだけ長いことにする。あと少しで二回目の夏がやってくるに違いない。こいつを迎える準備を終わらせる必要があるから、あたしは周到にもまずは始めることにする。
 蝉の鳴き声はまだ、聞こえてこない。


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