エロゲー 夏ノ雨 翠ss『雑談その12』

夏ノ雨 翠ss『雑談その12』
説明:共通ルート。
人生なんてゲームみたいなもの(宮沢翠、談)



「そーだねぇ。一年おきに四人で、上から男の子男の子女の子男の子で」

「四人か」

「駄目かな?」

「産みすぎじゃねーの」

「いやいや。子だくさん。幸せ家族」

「男三人ってのもどうだろ」

「いいじゃん」

「暴れるぞ?家が動物園みたいになる」

「それはちょっと困る」

「男女2-2でよくないか」

「うーん。でもね、三兄弟+振り回される妹って構図は譲れないんだよ。長男がノンフレームの眼鏡でね、次男が……あ、三人目誕生。ご祝儀ちょーだい」

「またかよ……」

「ご祝儀ちょーだい」

「お前ぽんぽん産むな?節操ねーな。そういう夫婦が勢いで離婚すんだよ」

「違います。古来から子は鎹と申しまして、子供が夫婦の絆となってね」

「分かった、分かった」

「じゃこの子、女の子ね」

「ピンだけどな。プラスチックの」
「……なにか言った」

「何も」

「これはなに?」

「……長女」

「うむ、いいでしょう。2000ドルちょーだい」

「重いなぁ……」

「代わりに名付け親にしてあげる」

「スゲー困る。ピン子でいい?」

「こら」

「ていうか名前いるか?」

「いるいる。リアリティを追求しないと」

「じゃ理香子で」

「テキトウだなぁ。……ま、よしとしよう。ほら、名付け親がピン刺して」

「ピンって言った」

「み、宮沢理香子ちゃんね?リカりんと呼んでやろう。ほら早く、桜井の番だよ」

「強引だ」

「むふふ、順調、順調。宮沢家家族計画」

「そもそもどうして子供産んで2000ドル儲かるんだ。絶対おかしい」

「未婚者の僻みだ」

「不当に搾取されている」

「いい、桜井。子は宝なんだよ?製作者のね、愛に満ちたメッセージが込められているの」

「ドルに込めるな。現金すぎる」

「独身コースなんて選ぶからいけないんだよ。株にも債権にも手出してるし。これは身の破滅が待ってるね」

「馬鹿、これから取り返すんだよ」

「うわ……」

「いーだろうが別に」

「クルマでお金、即金、審査ナシ。借金取り、娘のミルク代、強制執行東京湾

「不吉なワードを並べるな」

「あ、娘はいないか。独身だもんね」

「実は隠し子が居る。二歳九ヶ月」

「変なとこだけアドリブ利くよね、桜井って」

「六畳間の押入れに住んでる」

「隠し子ってそういう意味じゃないから。物理的に隠すな」

「そういや、姓変わるんじゃねーか?」

「せい?」

「リアルを追求すんだろ。苗字変わるじゃん。結婚したら」

「あー、あたし?言われてみればそうかぁ。そうだよね。考えてなかった」

「今更だけどな」

「苗字、苗字ねぇ……」

「仮に武田家としてみよう」

「武田翠?うわ、強そう」

「武勲を挙げそう」

「違和感あるんだけど」

「あとなんだ、村井翠だと、おお、イニシャル据え置きだ。それから翠、みどり、翠・J・フォックス、」

「人の名前で遊ばないでくれない……」

「好きな苗字でいいぞ。寄鳥さんとか」

「宮沢のままでいいよ。落ち着かないし」

「リアリティは?」

「東大法学部卒の婿養子をもらいます」

「将来有望だ」

「そうでしょう。そうでしょう」

「虚しくならない?」

「そういうこと言わない」

「……大体さぁ、言ってしまえば。おとなしく駒進めるだけでいいだろ。その設定必要か?東大卒とか三男一女とか」

「桜井も乗ってきてたじゃん」

「お寒い妄想というか」

「いーでしょ、夢見たって。ピカソは言いました。『想像に描くことの出来るものは全て現実である』」

「だからな。お前の夢は妙に血が通ってるというか、切実過ぎて胸にキリキリくんだよ。イケメンとかスポーツ万能とかその辺で手を打ってくれ。細かすぎる、怖えーよ、法学部だのノンフレーム眼鏡だの」

「誰か知らないけど偉い人は言いました。『神は細部に宿る』」

「次、翠の番」

「あ、どうでもよくなったね?駄目だなぁ桜井は。それじゃあ盛り上がりません。ただのゲームじゃないんだよ?いい、これはね。……人生なの」

「はよ回せよ」

「人生だからね、現実に即してるんだよ。例えば、通貨がドルでしょ?ってことは米国に赴任するようなエリートな旦那様なわけ」

「はいはい」

「素敵な旦那様なんだよ。マンションもぽんって買ってくれたし……ああん!」

「どうした?」

「…………」

「えー、『末っ子を養子に出す。100000ドル貰う』」

「なんてこと……」

「……どうして金入るんだよ。絶対養子じゃないだろ」

「リカりん……」

「娘売るなよ。人でなしめ」

「うああ……」

「やったじゃん。娘売った金で別荘買えるな」

ぐぬぬ……」

「ほれ、100000ドル。おめでとう、おめでとう。セレブと呼んでやろう」

「うう……」

「さあ、娘を出してもらおうか」

「断る!」

「断るな」

「うー……」

「諦めろ。俺も鬼じゃあない。娘に手荒な真似はしない」

「……桜井」

「うん?」

「これはピンだから」


暗転