エロゲー 夏ノ雨 翠ss『サンドバッグ』

夏ノ雨 翠ss『サンドバッグ』
説明:「つかれてるんならやめれば?」
翠ちゃんにはよくあること。



○自宅


「ま、マズイ……!?」

 時計を見れば短針は5にビシッ。長針は8にグサッ。時既に17時40……41分を迎えていました。違う違う。気のせい気のせい。短針は4のはず。まだ16時……、ちらり。ビシッ!

「あわわ……」

 何度確認しても5と6の二字の間に収まったまま時針は微動だにしてくれません。17時42分。あれ、さっきと何か違う……。
 余裕を持って17時30分には家を出たかったんです。出るはずだったんです。本当なら今頃駅に着いていて2番線ホームの白線の内側まで下がっているあたしです。急行電車が入ってきてでもちょっと混んでいてどうしようかな次の各停でいっかうふふ。それこそ真の姿のはずなんです。学生たるもの5分前行動が基本です。ところが……。時刻17時42分のあたしは未だ自分の部屋に立っていました。右手にサンダル、左手にフレアワンピースを掲げて。下着で。
 ベッドの上にはよそゆきの夏服が候補A候補B候補C飛んで保険として普段着の候補Xと広げてあります。そして足元には選外となった敗者たちの山、山……あれ、でもこのレースタンクは悪くないような。総レースでちょっぴり透け気味のタンクトップは生で着るとキツイですけど下に黒地で合わせたらいけるような、無地のフライスキャミがどこかにあったような、うーん……はっ!
 いけない。危うくまたコーディネートの無間地獄に嵌るところでした。このレースタンクは今日は無しにしましょう。なんかエッチっぽいので。お腹とか透けてるし。そう決めてえいやっと壁の方に放ります。でも彼女がふぁさーと音も無く着地したその先に探していた黒地のキャミソールをあたしは見つけてしまいました。これは……運命?そうなの?さそり座のあなたはちょっと大胆に攻めるのが吉なの?

「ううう……、ぐぬぬ……」

 ぐぐぐ、とあたしの右手は勝手に黒地のフライスキャミソール(¥680)とちょい透けレースタンク(サマー福袋)を拾いあげベッドの上に並べてしまいました。救いがあるとすれば裾はタックイン一択ということでしょうか。福袋に入っていたもので丈があたしにはちょっと長いのです。とするとバランスを考えてボトムスはロングのシフォンスカートに決まります。タックインでミニだと残念なスタイルがバレバレです。足元もそれならウェッジサンダルでよろしい気がします。おお!すごく自然にコーデが決まりました。スカート、それからサンダルとベッドの上に広げていけば、やっぱり思った通りです。あたし史上類を見ないゆるふわです。図らずもパステル調でまとまったコイツを纏えば、森、森ガール。そう、世人を惑わすニンフ的な。手持ちの服の少なさがこんな形で役立とうとは。うん。これが候補Dとして……ておい、候補増やしてどうする……。そのまま流れるような動きであたしは頭を抱えました。
 チック、チック、と時計が秒を刻む音。この段に至ってあたしは重大な決断を下しました。時計は見ない。そう、なんか怖いので……。集中。うん、集中です。時間のことは忘れて衣装選びに専念する。それが結果的には服を着るための最短ルートとなるんです。それからもう一つ。考えてばかりいても埒が明きません。今ある選択肢、候補ABCDXの中から選びましょう。よそ見はしない。もう迷わない。あれ、でもブラはこれで……?おだまりなさい。アミダでいいから早くしなさい、翠。あたしの頭にそんな御神託が下ります。
 パンパン。
 ちょっと洒落にならない遅れになりつつありました。花火大会の開始は19:00です。待ち合わせは中央駅改札に18:30。現在時刻不明。あたしは頬を叩いて気合を入れ直します。

「ふむ……」

 五択に絞られたのですから消去法で削っていきましょう。まずは候補X。キミです。トップスはフロントにレースアップリボンの付いた黄色いキャミソール。ボトムスは暗めのデニム地タイトスカート。あたしの普段着です。動きやすいしかわいいしお気に入りの服と言えます。この夏はタンスに落ち着く暇もなく洗濯籠とあたしの身体を行き来してくれています。ただそれだけに、ううん、ここにも惰性で並べてしまった感は拭えません。折角のお祭りにいつも通りではどうにも勿体無い気がします。わくわくするこの気持ちに嘘を吐きたくないような、ちょっぴり冒険したいような。でも、アクセントにフリンジのショートブーツを合わせてみたんです。お隣のお姉さんがくれたブーツです。あたしの足にぴったりでいつか履いてやろう履いてやろうと思っていたブーツです。靴が違うということは普段と同じでないワケですから、ちょっとした冒険と言えないこともありません。そもそもあたしの一番のお気に入りの服はこれなんです。ならば寧ろこういう晴れ舞台にこそ着ていくべきなのでは。けど翠またその服なのぉーなんて言われたら絶対ヘコみます。断然ヘコみます。多分泣きます。心に嵐が吹き荒れます。あたしのハートはズタズタです。五月の桜になります。終戦直後のトウキョウ・シティになります。
 これが断腸の思いというヤツなのでしょうか。あたしはそっと、黄色いキャミソールを横に除けました。分かってください。貴方を想えばこそなんです。お気に入りの貴方を死地に送り込むわけにはいかないのです……。

「うーん……」

 それでも候補はまだABCDの四着が残っていました。これをあたしはABとCDの組に分けてみます。
 ABに特に関連性は無いんですが、先ほどのちょい透けレースタンクを含む候補CDの組は、ちょっと露出が……多いと言えます。透けすぎあるいは見えすぎです。特に候補Cのボリュームチュニックなどは恥ずかしくて家の中でだけ着ているものでした。
 どエロいわけでは無いのです。むしろフェミ系統のかわいいデザインなんです。萌葱色の綿生地は派手すぎず地味すぎずごたごたした柄の付かない思い切った無地が淡い色合いをより引き立てます。裾は二層になっていて外側のシフォン地がゆるやかに広がりふんわりしたシルエットを作っています。直訳すると胸が視覚上ちょっぴり大きくなります。腰元にぐるりと入った色とりどりの刺繍はこうして見ても異彩を放っており、ただ者じゃないぞというオーラを感じます。そしてその下にショーパンを合わせればどういった効果に依るものか脚がスッと長く見えてしまいます。何の魔法かあたしの脚がシュっと、まるでリカちんみたいに……。ちょっと言いすぎました。とにかく。あたしはこれを着て家の中でくるくる回ってニヤニヤするのが大好きなのでした。およそ週一ペースで回っています。洗面所に玄関自室と鏡から鏡へくるくる回っています。家族の目などこのウキウキに比べればなにするものぞ!という感じです。
 でもそれは家の中での話であって、外に出るとなると大きな問題が発生するのでした。大きな問題。思うに死活問題と言ってよいかもしれません。あたしにとってこのチュニックは……エッチっぽい、のカテゴリに属する衣服なのです。そう、問題は襟ぐりでした。ベアトップとかチューブトップつまり胸から上は裸の服、ウエディングドレスを思い浮かべてもらえればいいと思います。あるいは、お風呂あがりに身体に巻いたバスタオル。申し訳程度に伸びる細っこい肩紐が無かったら正しくそれなんです。透けてないだけで何コレ、ネグリジェ……?みたいな。ラフなコットン地なので安心感はあるもののこの大胆に開いたスクエアネックが羞恥心という名の大きな壁としてあたしの前に立ちはだかっているのでした。

「ぐうう……」

 着たい。正直これを着たいのです。他の候補を立てて誤魔化し誤魔化し来ましたがあたしの心にはいつもこの子が棲んでいたのです。サマーチュニックを夏に着ずしていつ着るというのか。あと一年待てというのか。それで何か変わるのか。理性が囁きます。今日は花火大会。開始時刻は19:00。即ち夜です。闇が総てを覆う晩、炯々たる月の光は大抵のものを美しく映します。奇しくも今宵は上弦の月。……普通です。半月です。ともかく。夜だし多少の露出くらい目立たないのではと期待出来ます。さらに花火大会ですからみんな空を見上げることに夢中です。あたしの服装なんて誰も気にしていないでしょう。それは寂しい。頑張ったんだからちょっとは見て欲しいですがともかく。道行く人々に凝視されるような穴があったら入りたい事態は避けられるものと期待できます。さらにお祭りで誰もが着飾ってくることでしょう。浴衣にはっぴにサマードレス。可憐に着こなし現れる女性もいるでしょうし中には、あたしみたいにちょっと頑張ってみる人もいることでしょう。皆がみんなちょっぴり背伸びをするのです。それなら、他人の背伸びにも優しい眼差しを向けてくれるのでは。痛みを知って人は優しくなれるのです。何しろ今のあたしがそんな気持ちです。
 そして極めつけに、今日はあたしを含め女の子三人での待ち合わせでした。つまり知り合いの男子にじろじろ見られるような精神的惨劇は起こりえないと言うことです。男子に偶然出くわしたとしてもスッと逃げてしまえばいいのです。ならば。そう、ならば……多少エッチっぽくてもよいのでは?よいのではないでしょうか。
 その時、あたしの思考を切り裂いてぽーんと時報が鳴りました。ひとつ、ふたつ、……むっつ。六つ。
 …………。
 うあああ!

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エロゲー 夏ノ雨 翠ss『雑談7』

夏ノ雨 翠ss『雑談7』
説明:共通ルート。
翠ちゃんと猜疑心



「最初にさ、ポテチをギザギザにするの考えついた人って天才だよね」

「さあ……まあ、そうか。ふああ……」

「なに、興味ないわけ」

「あるある……」

「はじめに……桜井」

「おお」

「”はじめにことばがあった。ことばは神と共にあり、ことばは神であった”」

「あー、ゴッドが作ったわけじゃねーんだ、言葉」

「そこから創世記に接続して……、創めに神が天と地を造った。地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。神は云った。「光あれ」。すると光があった。……それから神は人、犬、リス、クラゲ、シロアリ、大腸菌、昼と夜などを造ってだね……重要なのはね、これだよ。”神が造った総てのものを見ると、それは甚だよかった”」

「はなはだ……おおむね?」

「非常に。JIS規格なんて目じゃないくらいに。全国模試で冊子に載るレベル」

「分かりづらい」

「100円拾って角を曲がったらまた100円」

「いや絶対裏があるぞ、それ。手放しで喜べない」

「晩御飯がカレー。四等牛肩バラ肉ゴロゴロ」

「何の呪文だ……ま、嬉しいけど。ちょっと伝わった」

「つまりね、この世に有りとしある良い具合のもの、それすなわちビーフカレーなわけ」

「落ち着け」

「神の御業なわけ」

「ふーん」

「絶妙なバランスがそこにあって、んぐんぐ……だからね、桜井。もうさあ……思うわけだよ。思わざるを得ないわけ、最初に……」

「んぐんぐ」

「最初にポテチをギザギザにするの考えついた人って天才だよね……」

「ぱりぱり……」

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エロゲー 夏ノ雨 ひなこss『仁義無き戦い掃除変』

夏ノ雨 ひなこss『仁義無き戦い掃除変』
説明:共通ルート。
酷暑に思考が鈍る桜井家の面々



三橋の町に夏が訪れていた。

ミーンミンミン。
ミーン、ジジジ……。
ジジヴヴヴヴ……。
ヴヴ、ヴヴヴ……。
ヴヴヴヴ!ヴヴ!ヴギギgyi――うるさいわね!あっ、ごめんね……ミーンミンミン……。
ミーンミンミン……ヴヴヴヴヴだからうるさい!
ミーンミンミンミン……。

暑さで参るのは人間だけ。
お前は元気だな。なんでわざわざ暑い時期に出てくるんだ。非効率だ。頭湧いてんじゃないのか。
桜井宗介は茹だるような暑気に、少し頭をやられていた。
蝉に八つ当たりをしているのだ。呪詛の念はガラス窓に遮られ、向こうには届かない。

平日の午後、桜井家のリビングはさながら死体安置所の様相を呈していた。
カーペットの上に三つの肢体が川の字を成し転がっている。
エアコンの風が最もよく当たる、その右端に位置しているのが瀬川理香子である。
文庫本の頁が数分に一度めくられていくところを見るに、まだ息はあるらしい。
中央で伸びる小さな身体は桜井朋実だ。
目蓋を固く閉じあんぐり口を開けて「茄子……お茄子……」などとうわ言を漏らしている。
秋茄子は嫁に食わすな、から何か茄子に涼しい秋の響きを覚えているらしい。
しかし残念ながら、茄子は暑い暑い夏の季語である。旬も夏だ。梅雨の水気を吸い上げてお茄子はぷっくり膨らむのである。
「えへへぇ……」朋実の口元がにへら、と歪んだ。
事実を知った時この笑顔は失われるのだろうか。勿論、茄子に罪はない。
その心神喪失も半ばという処にある朋実の顔に、無骨な腕が伸びていた。
だらしなく開いた妹の口を指でそっと閉じてやる。川の字の左端、桜井宗介の仕事である。
行為とは裏腹に、強くすがめられた宗介の双眸にはどこか凶暴な光が宿っていた。
その視線は真っ直ぐ伸び、鋭く窓へ突き刺さる。何かを睨み殺さんとでもいうかのように。調子に乗っている後輩にすれ違いざま放課後校舎裏と告げんかのように。
彼はメンチをきっているのだーーセミに。
宗介の瞳は瞬きをするたびトロンと力を失い、次の瞬きでボスゴリラの輝きを取り戻し、また数秒でチカラ尽きる。この男もやはり、正気を保っているとは言い難かった。
理香子、朋実、宗介。三人とも身体のあらゆる部位の運動が緩慢になっていた。
確かに一度無気力状態に陥れば、そして耳障りな鳴き声に囲まれ続ければそんな気もしてくるものだろう。
ヒト以外のあらゆる生物がいのちを謳歌しているーー夏。
だが実際のところ、暑さで参っているのは人間だけではないのだった。
桜井家の掃除機も、端的に言って参っていた。

ミーンミンミンミン。
ジジジ……ヴヴヴ……ズゴゴゴ!ズゴ!チッ……。理香子ちゃん、ちょっとだけ我慢してね……ズゴゴゴ!
ミーンミンミン。

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エロゲー 夏ノ雨 翠ss『ドッグファイト』

夏ノ雨 翠ss『ドッグファイト
説明:共通ルート、夏のさかり。
暑さで思考が鈍る翠ちゃん



あ や し い――あの二人。
あたしがふいにそう思ったのもきっと無理からぬことではないでしょうか。
トイ、こほん、お手洗いを借りてリビングに戻ったあたしの目に飛び込んできたものはと言えば、ソファに隣り合って座る桜井とリカちんの後姿でした。
二人ともぴったり身体を寄せて、少し高い桜井の肩にリカちんは頭を乗せるよう傾けて、長い黒髪が桜井の腕にかかって――おかしい!
それを認めた瞬間、あたしはお腹から声を発していました。

「そこっ、ちょっと待ったぁーーー!」

そこはあたしの場所です!
さっきまで座っていたから。というだけでは勿論なく、リカちんのお隣はあたしの特等席なんです。
隣に居れば、いつでもリカちんの服の裾をぐっと手繰り寄せられます。
それで、伸びる!って叱られながらも密着して、思いっっっきり息を吸い込んで――ああ、たまりません。
リカちんの髪の毛からは幸せの匂いがするのです。
なんと言うのでしょう。よく晴れた朝、窓を開けて風の入ってきた一呼吸目、あるいはほど好く薄いラベンダーの蜂蜜。
そう、甘みがあってどことなく食欲をそそるような。ちょっと舐めたくなるような。
本人に伝えてみたところ2mほど後ずさりされてしまったんですがきっと照れていたのでしょう。
そのようなものです。
これを一度嗅いでしまったらもう容易に、形而上の花園にトリップすることが可能です。
端的に言うと。
リカちんの御髪の匂いは、うっとりするようなものなのでした。
そしてそれを堪能する片手間に……仕方ない、桜井の相手をしてあげてもいいかもしれません。
つまり左サイドにリカちん。右サイドに桜井。司令塔あたし。
完璧です。どう考えても完璧な布陣です。
しかし今や、司令塔抜きで両サイドが連携を取ろうとしているのでした。

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エロゲー 夏ノ雨 翠ss『心理的強制』

夏ノ雨 翠ss『心理的強制』
説明:共通ルート。
家庭裁判所に訴え出る翠ちゃん。
遊園地での一件



「でね、次なに乗ろうかってみんなで相談してたんだよ」

「片っ端から攻めてけばいいじゃない。減るもんじゃなし」

「それがね、コーヒーカップとかロックンロールとか回り物ばっかりのゾーンに入っちゃってて……そんなの乗ったらお昼ご飯出てきちゃうじゃん」

「翠、きたない」

「ごめん、ごめん。でとりあえずそのゾーン通り過ぎたんだよ。そしたらなんか森?森の入り口があって」

「森?」

「森」

「仮にも遊園地に森は無いでしょ」

「でもあったんだもん……。あのね、そこだけ変に人気がなくってアトラクションも見当たらないの。昼間なのに暗いし、あっちにもこっちにも”工事中”の看板がバサバサって倒れてて、アスファルトも所々剥がれてて……暗ぁい森の奥の方からね、悲しげな鳥の声が聞こえるの」

「なによその怪しげな展開。人中異界的な作り話?暗い森とか」

「怪しくないよ、本当だもん……。じゃあ林にする」

「何の譲歩にもなってないわよ……」

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エロゲー 夏ノ雨 ひなこss『サワガニのいない川』

夏ノ雨 ひなこss『サワガニのいない川』
説明:追試失敗エンド、二ヵ月後。
いわゆる今年の夏は特に何も起こりませんでしたエンドの後の、ひなこさんと宗介



特集:都合のいい女

都合のいい女になっていませんか。
彼が喜んでくれるからと何でもしてあげていませんか。
彼の好きな料理を作り洗濯物を片付けて、それが当たり前だと感じていませんか。
そうして、ありがとうの一言で報われた気持ちになっていませんか。
ちょっと待ってください。
そのありがとう、ちょっと待ってください。
それは本当にあなたに向けられた感謝の言葉でしょうか。
例えば、彼はありがとうとあなたの目を見て言ってくれますか。
食事を食べ終わった後もあなたの側にいてくれますか。
休日には二人で外に出かけますか。
もしそうでないなら、あなたは都合のいい女になっているのかもしれません。
彼のありがとうはあなたに向けられた言葉ではないのです。
上げ膳据え膳の贅沢に感謝している、ただ、それだけ。
愛ゆえの奉仕、無償の愛――言葉にすると聞こえのよいこの状況は決して、恋人として好ましいものではありません。
むしろ、彼の心があなたから離れてしまう遠因となるのです。
それはどうしてか。
25ページから”都合のいい女”総力特集です。

「…………」

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エロゲー 夏ノ雨 翠ss『雑談その6』

夏ノ雨 翠ss『雑談その6』
説明:ボールを奪い合う翠ちゃんと宗介



夏の大三角形ってあるじゃない」

「星座の?」

「そう。こと座のベガ、わし座のアルタイル、白鳥座のデネブ。それでね、」

「デネブはいつか爆発して、ブラックホールになるんだってな!」

「……そうなんだ」

「あのな、ベガとアルタイルが織姫と彦星だろ。それなら残ったデネブは仲人か何かだと思いきや、実は間男なんだよ。あの手この手でベガ嬢に言い寄るんだけど相手にされない。それで数千万年ベガに振られ続けた挙句、嫉妬で爆発するんだ」

「なにそれ……」

「距離的にも地球から織姫星・彦星までは大体20光年ずつ離れてるんだけど、比べてデネブだけ100倍くらい遠い所にいるんだぞ。ハブられてるんだな」

「ふうん……」

「でも恐るべきことにベガ嬢に向かって全速力で近づいてるんだ。数十万年後にはキスするんじゃないかって勢いで。それでもやっぱり地球からは遠いんだけど」

「そう……」

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